
八十八夜――
春の終わりと夏のはじまりの境目に、
私たちはそっと立っています。
柔らかな日差しの中、えかき(夫)の手は
茶の新芽を丁寧にすくい上げ、
まるで命を抱くかのようにそっともみます。
私はその隣で、
同じようにはできない自分を思いながらも、
胸の奥が満たされるのを感じます。
向き不向きなんて関係ない。
大切なのは、
この瞬間を共に生き、季節の息遣いを分かち合うこと。
新茶の香りが私の胸に広がると、
過去の思い出も、遠くの笑い声も、
すべてがそっと重なり合います。
私たちの時間は、静かに、
でも確かに流れていきます。
八十八夜が近づくと、
えかきは毎年、お茶摘みに出かけます。
瀬戸内の風が頬をなで、
茶の新芽が光を浴びて輝く――
そんな季節です。
えかきは、茶葉を摘み、もみ、炒って、
一年分のお茶を丁寧に作り上げます。
それは単なる作業ではなく、
自然と向き合い、心を整え、
手の中で生命を感じる時間です。
私には、こうした細やかな手仕事は少し大変で、
どうやら A型気質の人の方が向いている ようです。
でも、えかきの淡々と楽しげな姿を見ていると、
私も少し勇気が湧きます。
向き不向きはあっても、
一緒に過ごす時間や、
共に季節を感じる瞬間の尊さには代えられません。
出来上がったお茶の香りをかぐと、
自然と心が満たされ、
日々の小さな喜びや、
過去の思い出がひとつひとつ蘇ります。
えかきと私が紡ぐ日々は、
こうして季節とともに、
静かに美しく重なっていきます。
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