その舞台を観たとき、
ただ「かっこいいな」と思っていた。
パスタの中で、
クールなシェフを演じていた。
無駄のない動きと、
少し影のある表情。
それが、とても自然で、
印象に残っていた。
特別なことが起きるわけでもないのに、
なぜか目が離せなかった。
あとになって、
その人がもう亡くなっていると知った。
驚いた。
そして、
あのとき見ていたものが、
少し違って思えてきた。
あの静けさも、
あの佇まいも、
もう、
そこにはいない人のものだったのだと。
人は、いなくなってから、
強く残ることがある。
あの舞台の中での姿は、
今も変わらずそこにあって、
見るたびに、
少しだけ時間が止まる。
それでもやっぱり、
思い出すのは、
最初に感じた、
「かっこいいな」という、
あの気持ちのまま
人がいなくなっても、
残るものがある。
それを大切にしたいと思う気持ちは、
きっと、愛なのだと思う。
大切にしたいと思う気持ちは、
ときに、もう会えない人にも向かう。
日常の中にも、
同じようなやさしさがある。